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1月19日 海馬について押さえておくべきたった3つのこと、あるいはH・Mさんに花束を

タイトルはホッテントリメーカーなんだけど、ちょっといじったのでリンクはなし。海馬というのは曇った北海の空の下ところどころ歯を剥いて海を呪っている伝説の生き物……ではなくて脳の器官。

海馬のない男

近年では、海馬は記憶や情動と深い関係があると考えられている。脳を手術して海馬を取り除いた人は、手術後新たに何かを長期にわたって覚えることが出来なくなるという。H・Mさんという仮名で知られた方の例が有名である。池谷裕二さんのサイト「海馬の基礎知識」(Gordon M. Shepherd (ed.), The Synaptic Organization of the Brain の部分訳)から引くと、

彼は若い頃、生命が危ぶまれるほどのひどいてんかんを煩っていた。1953年、HMは両半球の海馬体とその周辺の脳部位を切除する手術を受けた。この手術はてんかん発作が軽減したものの、劇的な副作用が現れた。彼は手術後から(現在に至るまで!)、新しい情報を長いあいだ保持しておくことができなくなった。それ以外の点においては、彼の精神状態はおおむね正常であった。

海馬の基礎知識

H・Mさんはさまざまな実験に協力され、海馬についての知見を増すことに貢献されたという。私が読んだどの概説書にもH・Mさんの名前は出てきた。報道(参考)によるとH・Mさんは最近お亡くなりになられた。魂の安息をお祈りする。

15:55 追記:AP (via Google) によればH・Mさんの本名は Henry Molaison さんという

記憶は海馬で起こる

海馬について押さえておくべきことに入る前に、海馬と記憶のかかわりについて簡単に触れておきたい。記憶とその保持は、いわば脳で伝言ゲームが起こるようなものだ。感覚器からの知覚刺激が脳に伝わり、数十秒ほど保持された後(短期記憶)、中期記憶といわれる状態におちつき、1時間から1ヶ月程度情報が保持されたあと、長期記憶に入る。長期記憶まで来ると、一生忘れることがない。きっかけがあれば、いつでも取り出せる情報として保持される。海馬がかかわるのは中期記憶の保持と考えられているそうで、ここで記憶の強化が行われることでめでたく長期記憶に情報が入る。

そこで何かをその場限りでなく覚えたいと思えば、海馬に保持されている記憶を、何らかの仕方で強化する必要がある。記憶の保持機構と海馬の性質を理解し、海馬にうまく働きかけて記憶を適切に強化することで、より効果的な学習が行われる。このエントリではそのために押さえておくべきことを、3つ紹介する。

1.三十回繰り返せ

記憶は繰り返すことで強化される(記憶増強)。とくに手続き型記憶と呼ばれる身体動作の記憶と、陳述記憶(ことばで表現できるような記憶)のうちの意味記憶と呼ばれる概念の記憶では、何度もくりかえし情報を反復することで、記憶が強化され長期保持されることになる。繰り返せといっても3回とか5回とかではなく、それこそ理想をいえば100回くらいは繰り返してもらいたい。

2.三度に分けて繰り返せ

もっとも宿題を忘れた小学生のお仕置きでもあるまいし、何も意味のないことを100回繰り返すのはけっこうきつい。私もそこまでやるのはよんどころない場合に限って、普段はもう少しさぼっている。だいたい30回といったところ。それも1度にすませるのではなく、何度かに分ける。分けることにも根拠があって、エビングハウスの忘却曲線といわれる無意味記憶についての実験に基づいて、時間をおいて繰り返すことにしている。

エビングハウス(Hermann Ebbinghaus)という心理学者が、自分を被験者にして記憶についての実験を行った。意味のない、子音・母音・子音となる三文字のアルファベットの組み合わせ100個を記憶し、あとでどれだけ覚えているかをチェックするというもので、ウィキペディアから引用すれば、結果はこうなった。

20分後には、42%を忘却し、58%を覚えていた。

1時間後には、56%を忘却し、44%を覚えていた。

1日後には、74%を忘却し、26%を覚えていた。

1週間後には、77%を忘却し、23%を覚えていた。

1ヶ月後、には79%を忘却し、21%を覚えていた。

忘却曲線 - Wikipedia

1日後までは急激に忘れ、あとはゆっくり忘れていくのがわかる。ここで、忘れかけのところにもう一度同じことを学習すると、歩留まりがよくなる。なので、同じ回数を繰り替えすのでも、一気に30回繰り返すよりは、1日後にもう1回、最初の学習から1週間後にもう一回……としておくと、記憶の定着がよくなる。暗記が必要なものや言語学習の構文学習などでは、私は1日後・1週間後・1ヵ月後の3回、10回反復をつごう3度繰り返すことにしている。構文の学習などは暗記しようと思っているのではなくたんに繰り返すだけだが、しかしこのやり方だと大概のものはもう忘れない。

3.上のが出来なかったからといってストレスをためない

なぜなら海馬はとても壊れやすく、海馬が壊れれば記憶能力そのものが失われるからだ(H・Mさんほど極端ではないにしても)。そうなったら取り返しが付かない。海馬は「虚血に対して非常に脆弱であることや、アルツハイマー病における最初の病変部位としても知られて」いる(ウィキペディア日本語版、「海馬」)うつ病になると脳が萎縮するといわれるが正確には海馬が萎縮する。萎縮して、記憶力が低下する。そこまで日常的なストレスで到ることはないにしても、ストレスをためるメリットは学習上はほとんどない。学習自体がストレッサーになるようだと悪循環になり、まことによろしくない。逆にいうと、リラックスした状態を保つことで、学習がより効率的に行われる。

30回をそれぞれ3度づつ、期間をおいて繰り返すのが理想的だといっても、現実にいつもそうできるとは限らない。そこで、出来なかったときは次の日以降に回したり、あるいは一度におさらいする量を減らしてみたりと、自分の出来る範囲で無理なく続けるのがよいだろう。人生は短く、技芸は長い。それは誰にとっても同じことで、一日二日遅れが出たくらいで、とくに絶望するほどのことではないと信じたい。出来なかったことを悔やむよりも、今日を無事に終わったことを感謝して明日以降に望みをもつのがいいんじゃないかと思う。海馬を失ったH・Mさんが記憶する能力をまったく失ったあとも日常生活を続け、クロスワードを楽しむいっぽう、さまざまな実験に協力して、もって余人に換え難い貢献を科学と人類社会の知の集積のためにされたことを思う。


まとめ

海馬で起こる中期記憶とその増強を効果的に学習に利用するためには、

  • 学習事項を30回繰り返せ。
  • かつ、その30回を3度に分けて繰り返せ。
  • 繰り返しが出来ないときは気にするな。

これまでのエントリの流れで、外国語学習を念頭においてはいるが、意味記憶が必要なすべての学習にこれは効果がある。資格試験や受験勉強等、いま伸びあぐねている方の一助となれば幸いである。

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